今回の作品『2.5次元の触覚』について、
1分程度で読めるテキストにしました。
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『2.5次元の触覚』は、パソコン画面の中で操作するカーソルがモチーフです。
現代は、素材に直接触れなくても作品をつくることができます。
異なる景色を合成したり、顔のパーツを変えたり、モデリングしたりと様々ですが、画面内で編集することにより作品が出来上がります。
今後はもしかしたら、頭に思い浮かべただけで作品を生み出せるようになるかもしれません。
それは、未来の触覚によって作られた物であるといえます。
いまの私には、素材を触ったときの生々しい感覚とともに作りたいという欲求があります。
これが、「触覚」をキーワードにした理由です。
今回は、2次元の画面内にしか存在しないはずのカーソル(手の代替物)を、3次元の現実世界に、身体を圧倒する大きさであらわしました。
まるでパソコン画面の中に自分が入り込んだような逆転した空間を、物質的な力で感じさせたかったからです。
その場に在る物や人は巻き込まれて、風景が丸ごと作品になります。
そしてカーソルは、記録のために撮影されて画像となり、2次元に還っていきます。
作品名の「2.5次元」には、そういったねらいがあります。
作品の表面のデザインにも意図があります。
金属板につけられた傷の効果により、太陽の光が乱反射して、模様が立体的に輝きます。
傷さえも美しくなり得るという、矛盾しているような面白さをみせるためです。
光や色を美しいと感じるのは、理屈では説明しきれない、人間の素晴らしい感性です。
矢印型という一見シンプルでポップな形を選んだからこそ、新しくて美しいものにすることにこだわりました。
以上綴りましたが、アートの特性は、モノやカラダのパワーを通して表現できるところだと思っています。
特に何も考えず、空っぽの状態でご覧いただいても、きっとたのしめるはずです。ぜひ気軽に鑑賞してください。
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第66回 東京藝術大学 卒業・修了作品展
https://diploma-works.geidai.ac.jp/
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